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【生命保険】”なんとなく3,000万円”をやめる。必要な保障額を自分で計算する方法

生命保険の金額を、どうやって決めましたか。

「営業の方にすすめられた金額」「なんとなく3,000万円くらいあれば安心だと思った」——もしそうなら、この記事はきっと役に立ちます。死亡保険の金額は、感覚ではなく計算で出せるからです。しかも、必要な材料は5分で揃います。

このブログでは、資産形成を「家づくり」にたとえて順番に整理しています。まず自分の家の間取り図を描いて、家計を食い荒らすシロアリ(=固定費)を退治して、貯まる仕組みを作る。ここまでが「貯める」段階でした。保険は、その次の「守る」段階にあたります。

ご自身の家計が今どういう状態か把握できていない方は、先に【家計簿なしでOK】あなたの家計は今どのタイプ?5分でできる「間取り図」診断の家計診断からどうぞ。5分で終わります。もちろん、この記事だけ読んでも大丈夫です。

なお、医療保険については次回まとめてお伝えします。1本に詰め込むと長くなりすぎるうえに、死亡保険と医療保険では考え方がかなり違うからです。今日は「遺された家族のためのお金」に絞ります。

先にお断りしておくと、これは「保険は無駄だから解約しましょう」という話ではありません。必要な保険はあります。ただ、多くの家庭が入っているのは、必要な保障ではなく、なんとなく安心できそうな保障なんです。僕もそうでした。

目次

僕は、自分が何にいくら払っているのか知らなかった

20代のころに入った保険は、2種類ありました。

ひとつは、勤務先の団体保険です。うちの会社では入社時に案内が配られていて、みんな入るものだと思ってそのまま申し込みました。保障の内容も、毎月いくら引かれているのかも、正直あまり見ていません。給与天引きなので、そもそも「払っている」という感覚が薄かったんです。

もうひとつは、親にすすめられて入った共済です。実家に来ていた担当の方から説明を受けて、22歳のときに契約しました。親が長く付き合ってきた方でしたし、すすめられるままに申し込んだ、というのが正直なところです。

どちらも、他と比べて選んだわけではありませんでした。「入っておいたほうがいい」と言われて、そういうものかと思って入った。それだけです。

中身をきちんと見たのは、家計を見直したときでした。固定費を洗い出す過程で保険証券を引っ張り出して、そこで初めて、自分が毎月いくらを、何のために払っているのかを把握しました。

誤解のないように書いておくと、僕はこれらの商品が悪かったとは思っていません。団体保険は割安なことが多いですし、共済にも共済の良さがあります。問題は商品ではなく、自分が何にいくら払っているのかを知らないまま、10年以上払い続けていたことでした。

まず、保険の全体像を1分だけ

保険は大きく2つに分かれます。人にかける生命保険(死亡保険、医療保険、がん保険、就業不能保険、学資保険など)と、モノや責任にかける損害保険(火災保険、自動車保険、地震保険など)です。今日扱うのは、この中の死亡保険だけです。

日本の家庭がどれくらい入っているのか、生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」を見てみます。生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は、2人以上世帯で89.2%。2人以上世帯の世帯普通死亡保険金額は平均1,936万円で、この数字は近年低下傾向にあります。そして、世帯が年間に払っている保険料は平均で30万円台後半です。

年間で30万円台後半。これを30年払えば1,000万円を超えます。金額の根拠を持たずに払う額としては、けっこう大きいと思いませんか。

もうひとつ、同じ調査で気になるデータがあります。直近に加入した契約の加入チャネルで最も多いのは、「生命保険会社の営業職員」でした。つまり、多くの人は自分で計算して選んだのではなく、すすめられて入っている。かつての僕と同じです。

出典:生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」

掛け捨てと貯蓄型、何が違うのか

死亡保険には、大きく2つのタイプがあります。

掛け捨て型は、保障だけを買う保険です。代表は定期保険で、10年や20年といった期間を決めて加入します。解約してもお金は戻りませんが、その分、同じ保障額なら保険料は圧倒的に安く済みます。

貯蓄型は、保障に貯蓄機能がくっついた保険です。終身保険や養老保険がこれにあたります。解約すると解約返戻金が戻ってきます。

貯蓄型を見るときの物差しが返戻率です。払った保険料に対して、解約時にいくら戻るかの割合です。100%を超えていれば払った額より増えて戻り、下回っていれば減って戻ります。ここで大事なのは、契約から10年程度は返戻率が100%を下回るのが一般的だということ。早く解約すると元本割れします。

僕が「運用商品だと思っていなかった」のは、まさにここです。貯蓄型の保険はお金を預けて増やす商品でもあるのに、僕は返戻率という言葉も、それが今何%なのかも知らないまま払い続けていました。

必要保障額の計算式

前置きが長くなりました。本題です。死亡保険の金額は、この式で出ます。

必要な保険金額 = 遺族に必要なお金 −(公的保障 + 貯金 + 配偶者の収入 + その他)

引き算です。「いくら必要か」だけを考えると際限がなくなりますが、すでに用意されているものを引くと、保険で埋めるべき穴は思ったより小さくなります。順番に見ていきます。

ステップ1 遺族に必要なお金を出す

必要なのは「今の生活費」ではなく「自分がいなくなった後の生活費」です。家族が1人減れば、食費も保険料も通信費も減ります。目安として、今の生活費の7割程度で計算するのが一般的です。

これに、子どもが独立するまでの年数をかけます。子どもが3歳なら、大学卒業まで約19年。ここは各家庭で決めてください。

住居費は注意が必要です。持ち家で住宅ローンを組んでいる方は、たいてい団体信用生命保険に加入しています。契約者が亡くなればローン残債がゼロになるので、生活費から住居費(ローン返済分)を外して計算できます。これを知らずに保険を組むと、数千万円ぶん多く入ってしまいます。賃貸の方は、家賃をそのまま計上してください。

ステップ2 公的保障を差し引く

ここが一番見落とされるところです。会社員や公務員が亡くなった場合、遺族には遺族年金が出ます。

遺族基礎年金は、18歳到達年度末までの子がいる場合に支給されます。日本年金機構によると、令和8年(2026年)度の金額は、子のある配偶者が受け取るとき基本額に子の加算額が上乗せされ、子ども1人なら年1,091,100円、子ども2人なら年1,334,900円です。(子の加算額は1人目・2人目が各243,800円、3人目以降が各81,300円)

遺族厚生年金は、これに上乗せされます。金額は亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。厚生年金の加入期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算されるので、若くして亡くなった場合でも極端に低くはなりません。

報酬比例部分は「平均標準報酬額 × 5.481 ÷ 1,000 × 加入月数」(2003年4月以降の期間)で計算します。たとえば平均標準報酬額が月30万円の方なら、30万円 × 5.481 ÷ 1,000 × 300月 ≒ 49.3万円。その4分の3で、遺族厚生年金は年額約37万円です。

さらに、妻が受け取る遺族厚生年金には中高齢寡婦加算があります。子が18歳到達年度末を過ぎて遺族基礎年金が終わったあと、妻が40歳以上65歳未満であれば年635,500円(令和8年度)が加算されます。つまり遺族基礎年金が切れた瞬間にゼロになるわけではありません。

正確な金額は、ねんきんネットや年金事務所で確認できます。「自分が死んだらいくら出るか」は、実は調べられる数字なんです。

参考:日本年金機構「遺族基礎年金」令和8年4月分からの年金額等について(年金額は毎年度改定されます)

ステップ3 貯金と配偶者の収入を引く

すでにある貯金と、配偶者が働いて得られる収入を引きます。ただし配偶者の収入は、あまり強く見込まないほうがいいと思っています。子どもを1人で育てながら働ける時間には限りがありますし、教育費の増加分に消えることも多いからです。ここは「余裕分」として扱うくらいがちょうどいい塩梅です。

勤務先に死亡退職金や弔慰金の制度があれば、それも引けます。就業規則を確認してみてください。

実際に計算してみる

具体例で通してみます。

家族構成は、夫(会社員・平均標準報酬額30万円)、妻(パート)、子ども1人(3歳)。現在の生活費は月25万円、うち住宅ローン返済が7万円で、団体信用生命保険に加入済み。貯金は300万円とします。

必要なお金は、生活費25万円の7割で月17.5万円。団信でローンが消えるので住居費は除外し、子どもが21歳になるまでの18年で計算すると、17.5万円 × 12ヶ月 × 18年 = 3,780万円。

公的保障は、遺族基礎年金が子が18歳到達年度末になるまでの約16年間で、1,091,100円 × 16年 ≒ 1,746万円。遺族厚生年金が年約37万円 × 18年 ≒ 666万円。合わせて約2,412万円です(実際には妻の遺族厚生年金は18年後も続き、中高齢寡婦加算も加わるので、これはかなり控えめな数字です)。

貯金が300万円。

差し引きすると、3,780万円 − 2,412万円 − 300万円 = 約1,068万円。

これが、この家庭が死亡保険で用意すべき金額の目安です。妻の収入や死亡退職金を見込めば、さらに下がります。

「なんとなく3,000万円」と、ずいぶん違いますよね。差額の2,000万円ぶんの保険料を、何十年も払い続ける必要はなかったということです。逆に、賃貸で子どもが2人いて貯金が少ない家庭なら、3,000万円でも足りないかもしれません。大事なのは金額の大小ではなく、自分の家の数字で出したかどうかです。

2028年4月の遺族年金改正について

いま調べると「遺族年金が5年で打ち切りになる」という記事が出てきて不安になるかもしれないので、厚生労働省の説明を確認しておきます。

2028年4月に施行が予定されている見直しで、遺族厚生年金は原則5年間の有期給付に変わる方針です。ただし対象は限られていて、女性の場合、施行直後に有期給付の対象となるのは18歳年度末までの子がいない、2028年度末時点で40歳未満の方。男性は18歳年度末までの子がいない60歳未満の方です。

18歳年度末までの子がいる間は、現行制度と変わりません。 子育て世代の方は、ここは安心していいと思います。子が18歳年度末を過ぎた後も、さらに5年間は増額された有期給付+継続給付の対象になります。

また、有期給付の額には有期給付加算が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の約1.3倍になります。5年経過後も、障害状態にある方や収入が十分でない方は継続給付を受けられます。遺族基礎年金の子の加算額も増額される方針です。

既に受給している方、60歳以降に受給権が発生する方、2028年度に40歳以上になる女性は、この見直しの影響を受けません。

なお、この改正はまだ施行前で、細部は今後固まっていく部分があります。最新の内容は必ず一次情報でご確認ください。

参考:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

タイプ別に、やることは変わります

このブログでは、家計の状態を貯蓄率と貯金額から3つのタイプに分けています(A=赤字〜貯蓄率5%未満、B=5%以上15%未満、C=15%以上。詳しくは【家計簿なしでOK】あなたの家計は今どのタイプ?5分でできる「間取り図」診断)。タイプ別に、優先すべきことは変わります。

タイプまずやること
A(赤字〜貯蓄率5%未満)保険料の総額を把握する。必要保障額を計算し、明らかに過剰な分から見直す。貯蓄型に高い保険料を払っているなら、そこが家計を圧迫している可能性が高い
B(貯蓄率5〜15%)必要保障額を計算し、過剰分を掛け捨てに切り替えて浮いた分を先取り貯金へ(【先取り貯金の自動化】給料日に5分の設定で完成。目的別口座で”勝手に貯まる”家計の土台
C(貯蓄率15%以上)貯金で代替できる部分を整理。貯金が十分なら保障額を下げる、または保険料払込期間を見直す

タイプAの方に補足すると、保険の見直しは固定費削減の中でも効きが大きい割に、面倒で後回しにされがちです。スマホ代の見直しが終わったら、次はここです。

見直すときの手順と注意点

順番を間違えないでください。

  1. 新しい保険に加入してから、古い保険を解約する。 逆にすると無保険の期間ができます。健康状態によっては新しい保険に入れないこともあるので、必ず新契約の成立を確認してから解約します。
  2. 貯蓄型は、解約する前に返戻率の推移表を取り寄せる。 保険会社に頼めば出してもらえます。「あと2年で払込完了、その後は返戻率が105%になる」という状況なら、解約より続けたほうが得なこともあります。逆に「20年払っても100%に届かない」なら、判断は変わります。数字を見ずに決めないことです。
  3. 解約以外の選択肢として「払済保険」がある。 保険料の払い込みをやめて、それまでに積み立てた分で保障額を減らした保険に変更する方法です。解約返戻金を受け取らずに保障を残せるので、「保険料はもう払えないけれど解約は損」という場合の中間解になります。取り扱いは商品によるので、保険会社に確認してください。
  4. 1990年代前半までに契約した保険は、解約前に必ず利率を確認する。 予定利率が非常に高い、いわゆる「お宝保険」の可能性があります。この時期の契約は、解約せず残したほうがいいケースが少なくありません。

保険相談窓口の使い方

自分で計算してみて「合っているか不安」という方は、無料の保険相談窓口を使う手もあります。ただ、仕組みは理解しておいてください。

無料相談が無料なのは、相談者が契約したときに保険会社から支払われる手数料が収益源だからです。相談員は善意で働いていると思いますが、構造上、契約につながる提案に傾きやすいことは事実です。

なので、使い方はこうです。先に自分で必要保障額を計算してから行く。 そして「私の計算だと約1,000万円ですが、抜けている観点はありますか」と聞く。ゼロから「いくら必要ですか」と聞くと、相手のペースになります。あわせて、複数社の見積もりを出してもらうこと、貯蓄型をすすめられたら返戻率の推移表を必ず求めることを徹底してください。

よくある質問

独身なら死亡保険は不要ですか。 扶養している人がいなければ、大きな死亡保障は要りません。ただ葬儀費用や部屋の片づけ費用は遺族にかかるので、数百万円程度あれば十分という考え方が一般的です。貯金でカバーできるならそれでも構いません。

専業主婦(主夫)に死亡保険は必要ですか。 必要な場合があります。収入がなくても、亡くなれば家事や育児を外部サービスで代替する費用が発生します。保育料やシッター、家事代行を何年ぶん見込むかで計算してください。

保険料は手取りの何%が目安ですか。 この考え方はおすすめしません。必要保障額から逆算した結果が保険料です。目安から入ると、目安に合わせて保険を買うことになります。

見直しはどのタイミングで。 結婚、出産、住宅購入、転職、子どもの独立です。家族構成とローンが変われば必要保障額も変わります。特に住宅購入時は団信によって必要額が大きく下がるので、必ず見直してください。

貯蓄型は損なんですか。 一概には言えません。強制的に貯まる仕組みとしての価値は本物です(僕自身、それで貯まっていた面があります)。ただ、保障と貯蓄が一体になっていると「保険料が高くて見直せない」「解約すると元本割れ」という身動きの取れない状態になりやすい。保障は掛け捨て、貯蓄は貯金や新NISAで、と分けたほうが調整はしやすくなります。

学資保険はどう考えれば。 これは別記事で扱います。考え方は貯蓄型の死亡保険と近いので、返戻率の話がそのまま応用できます。

まとめ|今日やること3つ

  1. 保険証券を全部集めて、一覧を作る。 商品名、月額保険料、保障内容、契約日。給与天引きのものは給与明細も確認してください。これだけで「何にいくら払っているか知らない」状態は終わります。
  2. 貯蓄型があれば、返戻率の推移表を取り寄せる。 電話1本です。
  3. 必要保障額を計算する。 生活費の7割×年数から、遺族年金と貯金を引く。紙とスマホの電卓で足ります。

最後に

死亡保険は、自分が受け取ることのないお金です。使うときには、自分はもういません。

だからこの保険は、遺していく家族への手紙のようなものだと思っています。「あなたたちがこれから何年、どういう生活をするのか、ちゃんと考えて用意しました」という手紙です。

そう考えると、金額を人にすすめられるまま決めるのは、少し寂しいことだと思うんです。中身を確認せずに何年も払っていた僕は、その手紙を白紙のまま封筒に入れていたようなものでした。多すぎても少なすぎても、伝わるものは変わります。

計算は、たぶん30分もかかりません。その30分は、家族に宛てた手紙を自分の言葉で書き直す時間です。

次回は医療保険です。結論から言うと、入らないという選択も十分に現実的な分野です。高額療養費制度という公的な仕組みが2026年8月から段階的に見直されるので、そのあたりも含めてお伝えします。

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