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損害保険は本当に必要か。入るべきものと削れるものを整理する

情報基準日:2026年9月

生命保険は家族へのラブレター、学資保険は子どもへのラブレター——と書いてきました。今回からは、少し毛色の違う保険に入ります。火事、事故、誰かへの賠償。「人」ではなく「モノと、他人への責任」を守る、損害保険(損保)の話です。

このブログでは資産形成を「家づくり」にたとえています。間取りを描き(家計把握)、シロアリを退治し(固定費削減)、貯まる仕組みを作る(先取り貯金)。そして「守る」段階として、生命保険・医療保険・学資保険を見てきました。損保も同じ「守る」段階ですが、これまでとは考え方が180度変わります。今日はまず全体像を俯瞰し、次回以降で火災保険・自動車保険などを1つずつ深掘りしていきます。

目次

先に結論

損保は、生命保険や医療保険と考え方が「逆」です。医療や死亡は公的保険が手厚く支えてくれるので「民間は最小限でいい」という話でした。でも損保は違います。火事で家が燃えても、車で人をはねても、国は基本的に肩代わりしてくれません。 だから損保の原則は「削る」ではなく、「起きる確率は低いが、起きたら家計が吹き飛ぶリスクにこそ、しっかり入る」こと。

ざっくりした地図はこうです。火災保険と個人賠償責任保険は優先度が高い。自動車保険は、車を持つなら対人・対物の賠償は必須。地震保険は住む地域と持ち家かどうかで判断。一方で、車両保険や各種特約は削れる余地があります。「保険は全部削ればいい」でも「不安だから全部盛る」でもなく、この濃淡を見極めるのが損保の付き合い方です。

僕が初めて損害保険と向き合った日

僕が初めて損害保険とちゃんと関わったのは、大学生のときに買った車でした。バイト代をコツコツ貯めて、自分のお金で手に入れた、初めての大きな買い物。うれしくて仕方なかったのを覚えています。

ただ、保険はというと、契約も名義も親任せでした。保険料の関係で、契約者も車の保有者も親の名前。主に運転していたのは僕なのに、保険の中身がどうなっているのか、なぜ親名義だと保険料が変わるのか、当時はまったく分かっていませんでした。「とりあえず入っておけば大丈夫でしょ」くらいの感覚です。

生命保険でも医療保険でも学資保険でも、僕は「なんとなく」で保険と付き合ってきました。損保もまさにそうだったわけです。ちなみにその愛車、今はもうありません。いつの間にか親に売られていました(名義上は親のものなので、文句も言えず…笑)。

この記事は、そんな「なんとなく」で損保と付き合っている人に、まず全体像の地図をお渡しするものです。

損保は「人保険」と何が違うのか(1分で)

生命保険・医療保険は、人の死亡や病気に備える「人」の保険でした。損害保険は、火事・事故・災害・賠償といった「モノや責任」に備える保険です。決定的な違いは、公的なセーフティネットがほとんどないこと。病気なら健康保険と高額療養費、死亡なら遺族年金がありました。でも、あなたの家が燃えても、あなたが加害者になっても、国が費用を肩代わりしてくれる仕組みは基本的にありません。だからこそ、自分で備える意味が大きいのです。

家計に関わる主要な損保4つ

① 火災保険 ― 持ち家なら最優先

家が火事・水災・風災などで損害を受けたときに備える保険。持ち家なら、家という人生最大級の資産を守るものなので優先度は最高クラスです。賃貸でも、自分の家財と、大家さんへの賠償(借家人賠償)のために加入するのが一般的です。なお、地震による火災は火災保険では基本的に補償されず、地震保険が別に必要です(後述)。補償範囲や保険料の目安は、次回の火災保険の深掘り記事で詳しく扱います。

② 自動車保険 ― 車を持つなら賠償は必須

自動車保険には、法律で加入が義務づけられた自賠責保険と、任意の自動車保険があります。自賠責は対人賠償の最低限だけをカバーし、物損や自分側は対象外。事故で相手に与える損害は数千万〜数億円になることもあり、対人・対物の賠償は任意保険で無制限にしておくのが基本です。一方で、自分の車を直す車両保険は、車の価値や貯蓄額によっては外す選択もあります。詳しくは自動車保険の深掘り記事で扱います。

③ 地震保険 ― 単独では入れない、補償も限定的

地震・噴火・津波による損害に備える保険。国と保険会社が共同で運営する公的な性格の強い制度で、火災保険とセットでしか加入できません。補償額は火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内(上限は建物5,000万円・家財1,000万円)と決められていて、「損害の全額」ではなく「生活再建の一助」という位置づけです。この割合が抑えられているのは、巨大地震のときに保険会社や国の財政が破綻しないようにするためで、財務省もその旨を明記しています。地震の多い地域や持ち家では検討価値が高い一方、判断が分かれる保険でもあります。

出典:財務省「地震保険制度の概要」

④ 個人賠償責任保険 ― 安いのに、いちばん見落とされている

自分や家族が他人にケガをさせたり、他人のモノを壊したりして、法律上の賠償責任を負ったときに備える保険。補償1億円クラスでも保険料は年間数千円程度という、コスパの非常に高い保険です。たとえば、小学生(11歳)が自転車で歩行中の女性(62歳)に正面衝突し、女性が意識の戻らない重体となって、監督責任を問われた母親に約9,521万円の賠償が命じられた判例(神戸地裁)があります。自転車事故でも1億円近い賠償があり得る、ということです。優先度は高い一方、後述のとおり他の保険に「特約」として付いていて気づかず重複していることも多いので、まず今の契約を確認するのが先です。

出典:自転車事故の高額賠償事例は各自治体の交通安全啓発資料等(例:長野県)。

損保で「削れる部分・盛りすぎ注意」

損保は「入るべき」ばかりではありません。むしろ、盛りすぎて無駄払いになっているケースが多いのもこのジャンルです。まず車両保険は、車が古い・貯蓄で買い替えられるなら外す判断もあります。次に見落としがちなのが特約の重複で、とくに個人賠償責任保険は、自動車保険・火災保険・クレジットカードに特約として二重三重に付いていることがよくあります。補償は1つあれば足りるので、重複は1つに絞れば固定費が下がります。ここは固定費削減の考え方とそのままつながる部分です。

あなたの状況で必要な損保は変わる

損保は、貯蓄率のタイプよりも「持ち家か賃貸か」「車を持つか」で必要なものが決まります。

状況優先度が高い損保検討・削減の余地
持ち家・車あり火災保険、自動車保険(対人対物)、個人賠償地震保険、車両保険、特約重複
持ち家・車なし火災保険、個人賠償地震保険
賃貸・車あり家財保険+借家人賠償、自動車保険、個人賠償車両保険、特約重複
賃貸・車なし家財保険、個人賠償家財の保険金額の見直し

共通して優先度が高いのは、火災(家財)保険と個人賠償。逆に、車両保険や特約の重複は、どの状況でも見直しの余地があります。

今すぐやること3つ

  1. 自分が「持ち家/賃貸」「車あり/なし」のどれかを確認し、上の表で必要な損保を把握する。
  2. 今入っている損保の証券を出して、個人賠償責任保険が重複していないかチェックする(自動車保険・火災保険・クレカを確認)。
  3. 賠償系(対人・対物・個人賠償)が「無制限」または十分な額になっているかを確認する。

おわりに

損保は、これまでの保険とは逆に「削る」より「肝心なリスクにしっかり入る」のが基本です。ただし、賠償はしっかり、重複はすっきり。この2つを押さえるだけで、無駄なく守れます。次回からは、この地図の一つひとつを深掘りしていきます。まずは持ち家・賃貸どちらにも関わる火災保険から。人生最大級の資産を、どう守るかの話です。

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